■入社してから現在に至る経緯をお話ください。
入社は1978年(昭和53年)。かれこれ勤続28年を過ぎたところです。大学で航空工学を学び卒業したので、航空機の製造メーカーに行きたいという気持ちもありましたが、航空会社も有力な就職口だなと大学を入学したころから思い、面接を受け、入社することができました。
入社して6年間は現場で経験を積み、その後、HSST(磁気浮上式鉄道)の部署に配属されました。HSSTというとわかりにくいかも知れませんが、記憶に新しいところでは、昨年の愛知万博のリニモ、あれがまさにHSSTの原型にもなるものです。その部署に3年間いました。
その後10数年は技術部門。元々、学生時代に強度とか構造とか(飛行機の胴体や主翼など)をやっていましたので、その修理などを行っていました。あと、MD11という飛行機が以前、日本航空にはあったのですが、93年から96年までダグラスから購入をしていました。その期間、約3年半の間、ロングビーチのダグラスにいました。
ここでは、単に勉強するために行っていたのではなく、その飛行機の製造過程など技術的なことをJALへ橋渡しするとか、実際つくっている航空機の状況をモニターし伝える、そういう仕事をしていました。
それから「しくみ」や「制度」そういったものの見直しなどの基本となる部署である品質保証部に7年いました。そしてこの現部署、整備本部整備訓練部に配属され、現在に至ります。
この整備訓練部は、去年の4月から配属です。考えてみると、入社してから3ケ月、所属していましたがいわば28年ぶりに来たわけです。ここは、品質保証の一部と考えることもできますが、品質保証では、主に「制度」「しくみ」「法律」を見て、この整備訓練部では、「人を見る」部署と区分することができます。配属され1年半、私自身も一緒になって勉強している最中です。
■そもそも航空工学や航空業界に興味を持ったのはどのようなきっかけでしょうか?

ありがちな理由ですが、乗り物が好きで、特に飛行機が好きだというのがありました。 さらに深く掘り下げれば、「星の王子さま」のサン=テグジュペリが好きで、「戦う操縦士」とかいろんな本がありますが、彼が飛行機に乗っている時の話とか、飛行機を題材にして書いていたので、 そういう影響もあると思います。小さい頃につくるプラモデルと言えば、飛行機ものが多くて・・あげていったらキリがないですが、そんな感じです。
■一等航空運航整備士コースが生まれてきた背景を教えてください。
はい。まず、18歳人口が減ってきます。またその一方で整備士のエキスパートが退職していくという社会的背景があります。 若い人材の採用という意味では、個々の会社に限らず、この航空業界全体を考えても重要なことです。
このコースを選択する学生さんというのは、この業界でエキスパートになろうと強く思っていらっしゃる人だと思います。そういう意味ではこのコースを一緒にやっていくことで、 JALグループ単体としても、積極的、前向きな意識を持った良い人材を採用できるチャンスが生まれます。
「優秀な人材(整備士)の育成」
そのために、航空局さん、専門学校さん、エアラインと産官学協力して、生まれたのがこの一等航空運航整備士コースということになります。

■産官学での話し合いは今からさらに本格的になっていくのですね?
そうですね。まず、この一等航空運航整備士コースは、企業という組織の枠を超え、歩調をあわせて産官学協力しあって、 1つのことを成し得ていくのですから、その点を捉えても、画期的なコースです。
そのためには、いろんなことをすり合わせていかなければなりません。経過としましては、基本的なこのコースの(産官学の)歩調あわせが、昨年度でだいたい終了。 今年は、より具体的な話をつめていくために、月に2回ほど定例的に集まっていきます。
来年度(平成19年度)からこのコースがはじまり、皆さんがエアラインで実習されるのはその2年後、3年生の時。 まだ時間があるように見えますが、このコースを充実させていく上でも、これからの話し合いは非常に重要です。
■新しくできるこのコースでのエアライン側さんの役目を教えてください。
簡単に言えば、この資格にあわせた「技術的な技量的な訓練」をエアライン側が行うということです。頭で考えるだけではなくて、一等航空運航整備士の仕事の範囲を繰り返し実習し、実際業務を行っていき、それを修得してもらう。このように技術、技量の指導が主なものとなります。
■なるほど。その技術、技量を学生さんは学んでいくわけですね。
はいそうです。先程の繰り返しになりますが、詳細は今から詰めていくので、今の段階ではお話を申し上げられないのですが、今から話をする内容は基本的なこととして聞いてください。 一等航空運航整備士(一等航空整備士ではない)は、通常の離発着整備が主な仕事となります。 ハンガーに入れて10日も2週間も飛行機を車検みたいに整備するのではなく、日々飛行機を使いながら、お客さまが乗るスポットとか駐機場とかで行う整備です。
今回の一等航空運航整備士は、その中でも、よく不具合が出ると予測される、タイヤやブレーキ交換、客室の整備をしていくのが主な業務です。 それを何度となく、繰り返し実習を行っていきますのでぜひ修得してもらいたいと思います。 先程は、この実習で教えるものは「技術的な技量的訓練」と申し上げましたが、実際の業務上の現場で実習をするので、整備に対しての姿勢、そういうことも感じとってもらえたらと思っています。

■一等航空運航整備士の資格を専門学校在学時に取得するメリットを教えてください。
まず、この資格を専門学校時代に修得するということは、相当な知識と技量を学生の間に修得することになります。そのことは当然、入社スタートする時点では、優位に働きます。
また一等航空整備士が最初の目標だとすると、この一等航空運航整備士の資格をとることは、山登りに例えたなら5合目、6合目付近まで到達していることになります。 そのため学生時に修得してくるというのは大いにメリットがあります。
逆に、単にこの資格があれば良いのか?と言えば、そうではありません。航空業界において一人前の整備士になっていくには、入社後もさら学び、現場の経験をより多く踏まなくてはいけません。
この業界は一度に多くのお客さまをお預かりします。多くのお客さまに安全、安心にまた定時に目的地へお届けするのが使命です。一人前の整備士になるには、単なる資格だけでなく、その使命を真摯にとらえ、時間をかけ成長していくことが大事なのです。
■航空業界においてどういう人材が必要なのでしょうか?
エアライン各社において採用基準は違うでしょうし、一概には言えませんが、ここでは当社のことを話させていただきます。
当社では採用時の面接を重視します。ここで基本的な人間像が見えてくるんですね。「30分ぐらいの面接で何がわかる?」との反論もあるかもしれませんが、これがよくわかるんです。(笑顔) 例えば、英語ができます、とか他の個々の資格は極端な話、時間をかければ入社してからでも頑張っていけばできます。
でも人としての基本的なことというのは、ある程度、入社してくるまでに形成されている。
ここで言う基本的なことというのは、組織の中で自分をうまく主張しながら、会社ではこうしていかないといけない、そういうことがわかっていくということことです。その為には頭が柔軟で、周りのことも考えられることが大事になってきます。 そういう心のあり方というか、素直さ、柔軟さというのは、人間の基本的な部分で一朝一夕で つくられるものではありません。また、すぐに変えられるものでもありません。
だからこそ、若い頃からその重要性を意識し、考え、行動することが大事だと思います。 若い時からフレシキブルな発想を持ち、基本的な能力を身につけていって欲しいですね。

■なるほど。それ以外にも大事なことはありますか?
コミュニケーションですね。整備は連携してやっていくものです。到着から発着まで短いときには1時間で 機体を見ていくわけです。その際、不具合がない飛行機はいくらでもありますが、何も起こらないそういう状況の時も、整備士はどれだけの方と話しをしなければ1時間後に飛行機が出ないのかといえば、キャビンアテンダント、運航乗務員、燃料会社の人、クリーニングをしてくれる人、いろんな人と限られた時間でコミュニケーションをとらないといけない。
不具合が出たなら、なお更で、その場で求められるのはコミュニケーションそのもの。 各部門との連携がとれないといけません。 ここで言う、コミュニケーション能力とは、話がうまいとかそういうことではなくて、 限られた時間で正確に、事を伝えていく。ということです。 また、厳しい状況になればなるほど、「この人信じられる人かな?」というその信頼関係が大事です。他の業界もそうですが、私自身、特にこの業界は多くのお客さまを一度にお預かりいたしますので、信頼関係を築き連携していくことが大事だと感じています。
■「信頼できる関係づくり」。大事なことですね。
繰り返しになりますが、具体的に航空会社が今回の一等航空運航整備士コースでできることは、技術的なことですが、日頃のコミュニケーションや連携、チームでの信頼関係、そういうことが大事なんだよとその実習から得てもらえると思います。今の段階ではどこまでできるかはわかりませんが、そう心がけていきたいと考えている次第です。 どの会社に行こうと、どんな職種に就こうと一緒で、会社組織で仕事をしていく上では そういうことが、最も大事なことだと思います。
■こう聞いていますと本当にこのコースは学生にとってのメリットが多いと思います。

そうですね。専門書なんかもこのコースに入られる方には提供します。もちろん、その専門書がなければ学ぶことができないということもありますが、それは通常、社外には情報開示していないもので、社内でも貸し出しという考え方のものです。 通常なら専門学生時代には触れられない専門書、それが見られるだけでも希少な経験ができると言えないでしょうか?
先程は、極端な例で、資格とかは入社してからでも時間があれば取れると言いましたが、 現実、入社してからは通常の仕事の上で学んでいきますから、当然、時間的な制約がでてきます。
だから入社前、専門学生時代に、時間を目一杯使って、勉強できるというのはその後のことを考えると大きなメリット、アドバンテージですよね。 実際、今までにも、専門学生時にかなり勉強されてきている人がいますよ。 その人は知識面だけ考えたなら、10年たっても周りの人より知識的には上にいる。
若いときにそういう基本的なことができてくると、仕事上、プライドが生まれてきます。ここで言う、プライドは良い意味のものです。それが良い意味での向上心にもつながっていくので様々な方面で良い方向に進んでいきます。 もちろん、会社としても出来るだけ早く一人前にしていきたいけれど、そこには様々な経験が必要です。 とはいえ、積極的に知識も技量も得ていくその姿勢は、経験の有無にかかわらず、大事なことです。
実は、この一等航空運航整備士を選択する学生というのは、その積極的な姿勢そのものが長けているように思います。資格も大事ですが、その積極的姿勢を学生さんに持ってもらうこと。それこそがこのコースをつくった本当の意義なのかもしれません。
■JALグループとしての方向性など教えてください。
当社は時間をかけいろんな経験を積み重ね成長してもらえるよう整備士を育成しています。こういう資格を持った人にはなおさら、整備全体を眺め、いろんな角度からチャレンジしていってもらう必要があると考えています。 そのために会社として、それぞれのステージでチャンスがあるよう、夢がもてるよう、さらに環境を整備していかなくてはと感じています。
例えば、資格を取得したからと言って、それが単なるゴールではないことは、今まで述べてきたとおりです。若い人が目指す最初のゴールは何かと考えたなら、整備それ自体を自分の責任で「ハンドリングしていく」その状況でしょうか。そんな時に「成長しているなあ」と実感できるのかもしれません。
そう考えたなら、支店勤務や海外勤務などの方がそういう責任ある場面が多いかもしれません。 冒頭に言いましたが、私もロングビーチにいた3年半はその後の仕事に大いなる影響を与えています。 そういうチャンスをどんどんつくって、いろんなことを経験してもらい、成長をしてもらう。 そのように考えています。
■整備士になっていく上で大事なことを教えてください。
航空専門学校へ行く学生さんは、他の進学する学生に比べて、「航空関係に就職しよう」と一途だと思います。一途なことは良いことです。航空専門学校生が良いのは、悩んでも、学生の時から決心して、頑張ってやっていく覚悟がある。それはとても素晴らしいことです。 ただ逆に、一途だからこそ、専門になればなるほど、視野が狭くなる可能性もあります。なので、本を読むとか、専門分野以外でも幅広く知識を得ていくことが大事です。 足りないところを違うもので補っていくそういう考え、行動が必要だと思いますね。
・・・・貴重なお話をありがとうございました。 ・・・・・・
